on the corner 386 



水道橋


namasuteeさんに教えてもらってニコンサロン新宿で今やってる<春日 広隆展 [存在と時間]>に行ってきた。

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基本的には大判で撮ったニューメキシコあたりの風景写真で、いわゆるファインプリントみたいなやつなんだけど敢えてインクジェットで出力している。絵的にはちょっと不思議な繊細さを持ったプリントで、全体にハイキーで白が厚く、シャドーは濃いグレーであって純黒ではない。ふつうのモノクロプリントを見慣れた目で見ると一見黒の締まりがないようにも見えるが、それはそれで独特の奇麗さがある。
作家ご本人に少しお話を聞くことができて、そういう考え方もあるのかなと少し納得した。僕が理解した範囲で言うと、彼はいわゆる銀塩的なシャドーの締め方になにか不自由を感じていて、シャドーがもっとリニアーであって欲しいらしい。焼き込んで黒の中に黒のディティールが潜んでいるようなトーンは本質的には感材の性質であって、別のメディア、例えばインクジェットなら別の特性曲線をカリブレーションによって得ることも可能で、彼がやりたいことはそっちのほうにある。そういうことも有り得るかもしれない。
結局のところ、感材にはそれ自体の物性として最大濃度の黒と最小濃度の白がある。例えばスライドフィルムは強いコントラストがあるけど、印画紙はそれよりもコントラストが小さく、印刷は(刷り方にもよるけど)もっと小さい。ディスプレーはたぶん良質のプリントほどのコントラストはないでしょう。だけど自然界のコントラストはしばしばスライドフィルムなんかよりもはるかに大きく、どんな感材であれコントラストの幅を押さえ込み、トーンを圧縮しないと黒潰れ白トビが激しくなる。
単純に圧縮しただけだと軟調になりすぎて不自然に見えるから、そこにトーンカーブが必要になる。ハイライトの肩やシャドーの脚部ってのはトーンを圧縮しながら中間のグレーのコントラストを不自然に浅くしない手段なんだろう。もちろん意図的にコントラストを過剰に上げたり、あるいは逆にその作家さんのようにギリギリまでリニアにすることも有り得る。だけど、イメージを定着する媒体には根本的にこうしたトーンとコントラストの折り合いがあって、それを外した時にはなにかしらを失うトレードオフがたぶんあるんだろう。個人的にはなにか違和感のあるプリントではあったけど、それも単に印画紙のトーンに慣れてしまっているからかもしれなくて、インクジェットが印画紙をフォローする必要なんかないと言えばない。

長くなるけどここからは別の話。トーンの話と関連して。フィルムスキャンしてディスプレーで写真を見ると、印画紙の特性曲線によるアナログな階調調整をショートカットするわけで、それだけでもディスプレー上のモノクロ写真は印画紙と違ってしまう。これはもうメディアが違うからしょうがないことなんだろう。ディスプレーで印画紙のような黒の中の黒を見せるのはたぶんかなり難しく、あるいは物理的に不可能かもしれない。でもディスプレーは印刷ほどは不自由ではなくて、その知恵を使えないかなぁなんて思っていた。たぶん感覚的に印画紙のトーンがわかっている人はそれに従ってうまくトーンを出せるんだろうけどねぇ。
印刷はどうやって写真に近づこうとしているのかというと、ほんとのところは僕もよく知らないんだけど、どうもその鍵のひとつはシャープネスにあるみたい。可能なトーンの幅は素材的に決まっちゃうとしても、シャープネスの効果でいくらかそれを埋め合わす錯覚を生むことが出来るらしい。
そういう意味じゃいわゆるアンシャープマスクってのはすごく不器用なイフェクトということになる。アンシャープマスクを強く掛けるとエッジに縁どりみたいなのが出来て、ふつうはそれが不自然にならない範囲でしかアンシャープマスクは掛けられない。でもエッジにはあんまりシャープネスを掛けずにトーンを守り、微細なトーンのディティールを浮き立たせてシャドーの中の黒を見せるようなことを印刷ではやっているらしい。似たようなことはフォトショップのフィルターの組み合わせでも可能で、それがうまくいっているかわからないけどこのごろここにエントリーしてるやつはみんなそういうふうにやってる。まぁ写真としてどうかということとはかなり違う話で、こうだらだら書きながらどうでも良いっちゃどうでも良いことだよなぁと思うんだけどね。

同じぐらいディティールが出るようにフォトショップ謹製のアンシャープマスク掛けたのが下のやつ。ちょっと違って見える?これだとトーンがシャープネスにいじめられてギスギスしちゃってると僕は思うんだけど。


<追記>なんか読み返してもったいぶってるみたいな感じがするね。もし興味ある人がいればこの処理をフォトショップのスクリプトごと公開します。何段階も踏むし微妙なトーンカーブもあって言葉では説明出来ないので。僕はVer.7で作ったんだけどこれは今のCS2でも動くのかな?

COMMENT

namasutee URL @
04/30 01:49
no title. 行かれましたか。
綺麗なプリントではあったでしょう?
あれで今後商売していくみたいだから、まぁレベルが高くて当然ではあるんですけれど。

写真の内容ではなくて、プリントのクォリティーだけを気にして見てたんだけど、空のグレーがなんだか不自然というか好みではなかったですね。グレーのインクを塗りたくったような空の感じで。
それと、ボケている部分のものと空の境目辺りがちょっと変な感じかな。
でもデジタルプリントでファインプリント作ろうとするとあんな感じになるのかもしれません。
実際に、あの手の写真を銀塩でやっている作家の作るファインプリントの感じをかなり上手くシュミレートしているとは思います。
ただ、バイテンで撮ってドラムスキャナーで読みこませて、適当に大きなプリント作るとそこそこのレベルのものは出来ちゃう気もしてるのですけれど。

今回もぐらさんが書いている前半部分は正にゾーンシステムの考えそのままですよ。
トーンカーブをいじるというところが、増減感現像で対応している部分だし。

ちなみにそのうちに、銀塩プリントを試しにやってみては?
きれいなネガ(ちゃんとトーンが出ている)を作っているみたいだからプリントするのにそんなに苦労しないと思います。
mogulla URL @
04/30 14:24
no title. たしかにすごくきれいだし、線の細さみたいなものが印象的でした。でもファインプリントってかなりフェティッシュな要素があると思うんですけど、そういう部分に食い込んでくる感じが僕には無かったかなぁ。なにか水彩画の軽さで、それが好きな人はあれが欲しくなるのかも知れません。彫りの浅さがむしろ良い、みたいな。
ゾーンシステムで中間調でテクスチャーが出て、ゾーン1とか9ではテクスチャーがほとんど無い、そういう言方をするみたいですけど、その意味ってのなかなかわからなかったんだけど、なるほどねーと思います。
プリントはやってみなくちゃいけませんね。基準とするものが曖昧なままでぐちゃぐちゃやっててもしょうがないので、69の密着をちょっとやってみてから伸ばしに挑戦しようかと。ありがたいことに暗室使っていいよと言ってくれている方もいるのでお言葉に甘えさせていただこうかと。



 

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